"あの日の約束"十一

 

「ほら、見て。あれが天狼(シリウス)だよ」
「え、どれ?」
「あの、オリオン座の隣にある大犬座の、一番明るい星」
「えっと、あれ?」
「違う。あっち」
「ああ、あれか。きれいな星だね」
「うん。狼は一生を終えると、天狼(シリウス)になるんだよ」
「えっ、僕たちは死ぬと、星になるの?」
「そう。おいらのお袋も、あそこにいるんだ。病気で死んじまったけど、いつも
おいらを見守ってくれてる」
「そっか、だから天狼(シリウス)って、あんなにきれいで優しいんだね、ガブ」
「ああ。今夜は月もよく見えるし、天狼(シリウス)も上機嫌だ。最高の夜でやんす」
「そうだね。……あ、そろそろ戻らなきゃ!明日は狩りだから早く寝ないと。父
さんにまた叱られるよ」
「そうだ、明日はお前に狩りを教える日だったな。早く帰らねえと、ギロさんに
怒られちまう!さあ戻ろう、イチ。今夜はすごく冷える」

 

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