天狼のオオカミ 第二章 "狼の掟"
天狼(シリウス)への讃美歌が、今宵も傷口を引き裂いた──
狼なんざ、所詮弱い生き物。ひとりじゃなんにも出来やしねぇ。 だが、仲間がいれば強くなれる。絆があれば生きられる。狼ってのは、そういうもんなのさ。
そう思えば、何も怖くなかった。そう思えば、現実を見る事ができ、 また、ゲンジツから逃れる事ができた。
ま、いくら逃げようとも、心の傷口が塞がる事はなかったんだけどよ。 現実を見て血を蓄え、ゲンジツを感じて血を流す。そんな毎日の繰り返しだ。 生きとし生けるもの、みんなみんな、そんなもんだろう?そう。オレたちゃみんな、 そうやって生きているのさ。