二つの獅子座(ふたつのししざ)
    

プロローグ 〜原初の獅子座〜

 

ここは地球の何処かのとある森・・・
辺りは日が暮れ、太陽が山の向こうに沈みゆく頃・・・

「くそ・・・オオカミ共め・・・」

一匹の片耳に2枚の黒い羽根をあしらった耳飾りをしたオオカミが
一匹の角の大きな雄鹿を追い詰めていた。雄鹿の足には切り傷がついていた。

「・・・後は貴様だけだ。」

オオカミが爪を構え、雄鹿を睨みつける。
互いに睨み合い、オオカミが一歩一歩、雄鹿に歩み寄り、
雄鹿はオオカミと睨み合いながら一歩一歩、後ずさりをする。
雄鹿はオオカミにどんどん追い詰められていく・・・

6匹ほどのオオカミ達の群れがこの森で狩りをしていた。
この森の草を食べにきていた5頭ほど鹿の群れを見つけ、
オオカミ達は一斉に鹿の群れに襲い掛かった。
オオカミ達は4頭の鹿を既に仕留め、
生き残った最後の一頭が必死に抵抗をしていた所であった。

「誰がお前らなどに食われるか!!」

雄鹿が大きな角を突き出してオオカミの方へ走り出し、捨て身の反撃に乗り出した。
雄鹿の角は大きく、先の部分が鋭いため、直撃すればオオカミといえどもひとたまりもない。
しかしオオカミはその場に止まり、微動だにしない。

「親方様!!危ない!!」
「レグ!!逃げろ!!やられるぞ!!」

他の仲間のオオカミがオオカミに叫ぶ。

「オオカミめ!!この距離では逃げれまい!!」

大きな角を突き出した雄鹿がオオカミの間近に迫ってくる!!
雄鹿がオオカミに突っ込むのも時間の問題だった。

「・・・・・・」

だが、オオカミはその瞬間、
突っ込んでくる雄鹿の角と体すれすれに雄鹿の真上を飛び越えた。

「な・・・何・・・!?」

オオカミは雄鹿の真上を飛び越えた後、見事に着地し、

「その威勢だけは褒めてやろう・・・だが・・・その無謀な威勢が自らを殺める事となるぞ。」

「なっ・・・!!」

オオカミは突っ込んでくる雄鹿の真上を飛び越え、
雄鹿の後ろを取ったのだった。突然の事態に雄鹿は動揺する。

「くっ・・・くそ!!」

雄鹿は走って逃げようとしたが、瞬時にオオカミは雄鹿に飛び掛り、
すれ違いざまに雄鹿のわき腹辺りを鋭い爪の一撃で切り裂く。

「ぐあぁ!!」

オオカミの一撃を受けた雄鹿はあまり激痛でその場に横に倒れた。
わき腹には深い切り傷ができていた。

「ぐっ・・・お・・・おのれ・・・オオカミめ・・・」

雄鹿は必死に立ち上がろうとするが、激痛で立ち上がれず、
立ち上がろうとすると、傷口からどんどん血が流れてくる。
急所である腹部の付近をやられるという事は大きな致命傷だった。

「悪いが・・・俺達も生きるためなんでな・・・今楽にしてやる・・・」

オオカミが雄鹿に止めを刺すため、ゆっくり歩み寄る。
雄鹿に歩み寄ると同時にオオカミの片耳の耳飾りの2枚の黒い羽根が小刻みに揺れる、
そのオオカミの姿を見た雄鹿は絶句した顔で、

「こ・・・こいつは・・・獅子の谷の・・・!!」

そしてオオカミは雄鹿の首筋に深く噛み付く、オオカミの鋭い牙が雄鹿の首筋を貫いた。

「ぐっ・・・かはっ・・!!・・・く・・・くそ・・・・・・
  ・・・だが・・・お前らに一つ・・・忠告しといてやる・・・
  この森に最近・・・人間共が・・・現れるように・・・なった・・・
 そいつらに・・・俺達の仲間を・・・大勢やられた・・・
 ここで狩りを・・・していたオオカミ・・・共もだ・・・一瞬で・・・だ・・・
  お前らも・・・せいぜい・・・気を・・・つけ・・・ること・・・だ・・・な・・・」

「・・・!!?・・・」

雄鹿は息も絶え絶えの声でそう言うと、オオカミは驚いたように目を大きく見開いた。
雄鹿は目を閉じると、雄鹿は横に倒れ、しばらく小刻みに痙攣し、
やがてぴくりとも動かなくなった・・・勝負はついた・・・
オオカミは最後の一頭をとうとう仕留めたのだった。

「す・・・すげぇ・・・さすが親方様・・・」
「ああ、さすがとしか言いようがないな・・・」

その一部始終を見ていた仲間のオオカミ達がオオカミの狩りに感服していた。

「・・・・・・」

しかし最後の一匹を仕留めたオオカミは仕留めた雄鹿を見ながら、
無言でその場に立ち尽くしていた・・・



 

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